■はじめに
シンガポールは国土も狭く、食料の大半を輸入に頼っている一方で、限られた土地を活用して葉物野菜や卵、養殖魚を中心に国内生産に務めています。今月は当地の食料事情や生産される農作物、水産物について紹介します。
■シンガポールの食料事情
シンガポールは国内で販売されている食品の90%以上を輸入に依存している都市国家ですが、シンガポール食品庁(SFA)は2030年までに栄養ベースでの食料自給率を30%に引き上げる目標を掲げています。当地は国土が狭く農地用途と指定されている土地は国土の1%と限られていますが、同国初の垂直型野菜農園が2012年に開園し、現在は国内で4ヶ所目となる鶏卵施設の建設が予定され、政府も積極的に予算を投入する等、食料自給率向上のために様々な取組が行われています。
■V-Plus Agritech社の取組
シンガポール西部にある「V-Plus Agritech社」は、魚の養殖と水耕栽培を組み合わせたアクアポニックス農法を専門とする企業です。当社では、効率的な野菜の収穫のため最新技術を活用した微生物・廃棄物管理を行いつつ、垂直型アクアポニックス農法でスペースを最大限に活用し、従来の土壌農法に比べて作物収穫量を7倍に増加させる事に成功しました。
播種から収穫まで最短1ヶ月のサイクルで循環させ、化学農薬を一切使わない事も特徴です。この農法では、レタス、ほうれん草、小松菜、水菜、バジル、トマト、トスカーナケール、チンゲンサイ等が栽培可能で、微生物プロファイリング(植物の生育環境における微生物の多様性を特定する研究)を通じて野菜が何を必要としているか把握し、新鮮な野菜の収穫・病原菌の撃退に役立てています。アクアポニックス農法は最低1平方メートルから設置する事が可能で、自宅や庭・カフェ等での野菜栽培や砂漠地帯での野菜生産の一助となる事も期待されています。
当社では、稚魚を市場で買い付け養殖をして国内レストラン等に販売する取組も行っています。魚の餌となる昆虫は上記の農法で廃棄となる野菜を活用し当社で育てる事で、循環を図っています。当社では主にティラピア、アジアンシーバス、オーストラリアンジェイドパーチ、ナマズ、鯉(観賞用)等を養殖し国内消費を支援しています。
■おわりに
実際にV-Plus Agritech社を視察する機会がありましたが、限られた土地で作物を育てる技術に感銘を受けました。当社ではシンガポール国立大学や南洋理工大学等の地元の大学とも協力し、栄養循環における微生物の活用やミールワームの研究を行いながら、効率的な作物収穫を目指しているとの事でした。食料自給率では課題の多いシンガポールですが、これら最新技術を駆使した農業・養殖技術は、同様の問題に悩む都市国家の課題解決に繋がると感じました。日本全体の食料自給率向上を考えた時に、シンガポールの技術がヒントになるかもしれません。

